もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

表紙は若干アレだが、中身は非常に良い本。(個人的に表紙はマーケティング戦略の一環かなとか思う)
発想力が素晴らしい。スポーツ競技のマネージャーとドラッカーのマネジメントを絡めると、こんなに面白くなるんだとびっくりした。

本書では高校野球部のマネージャーのみなみが、ドラッカーの教えを元にチームをマネジメントしていく様子が書かれている。
特に面白かったのが、みなみがイノベーションに取り組んだという章。南はドラッカーの教えをヒントに、高校野球界の常識の変革に取り組んだ。

イノベーションの戦略は、既存のものは全て陳腐化すると仮定する。しがたがって既存事業についての戦略の指針が、よりよくより多くのものであるとすれば、イノベーションについての戦略の指針は、より新しくより違ったものでなければならない。
イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。イノベーションを行う組織は、昨日を守るために時間と組織と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために解放出来る。(P296)


高校野球の何が古いかを考えた時に、みなみは『送りバント』と『ボール球を打たせる投球術』だと考えた。前者は打高投低が著しい現代野球にそぐわずに、打者の創造性が失われることを危惧し、後者はボール球を打たせることに拘るあまりキレや勢いというものが疎かにされる可能性が考えられた。そしてみなみは両者を捨てる決断して、全く新しいパラダイム「ノーバント」「ノーボール作戦」を打ち出した。

最後のシーンはしてやられたという感じで、非常にうまく伏線が張られており、物語としても非常に面白かった。是非一読を。